
この記事では、LGBTQ+(性的マイノリティ)と養子縁組についてご説明します。
目次
養子縁組を行う目的
LGBTQ+当事者が養子縁組を行う目的は、大きなものとして、つぎの2つがあげられます。
- パートナーと法律上の家族関係になる
- パートナーとの間に子どもを迎える
パートナーと法律上の親子関係になる
いまの日本では同性同士の婚姻が法制化されていないため、同性カップルが法律上の家族関係になる手段として、普通養子縁組が利用されています。
パートナー同士で養子縁組を結ぶと、法律上は親子関係という家族関係になります。



年長者が「養親」、年少者が「養子」という関係です。
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パートナーと親子関係になるメリット
法律上の親子関係になることによって、つぎのような効果・メリットがあります。
- 扶養義務が発生する
- 法定相続人になれる
- 健康保険の扶養者・被扶養者になれる
- 父母・祖父母から贈与された場合の特例税率が適用できる(贈与税)
- 父母・祖父母から住宅取得資金等を贈与を受けた場合の特例が利用できる(贈与税)など



ふたりの年齢に差があれば、ふたりの関係が対外的に説明しやすくなることもあるかもしれません。
パートナーと親子関係になるデメリット・リスク
法律上の親子関係であるということは、婚姻関係ではないということになります。パートナーが法律上の「配偶者」ではないことで、つぎのようなデメリットがあると考えられます。
- 民法の婚姻関係規定が適用されない
- 「常に相続人」(配偶者)にはなれない
- 所得税・相続税・贈与税の配偶者控除等が利用できない
- 国民年金の第3号被保険者(配偶者)になれない
- 養子縁組した者同士は、離縁をしても結婚できない(民法第736条)



将来「同性婚」が法制化されたときに、養子縁組を離縁しても結婚できないという事態になることも考えられます。
また、つぎのようなリスクも考えられます。
- 親族が戸籍を見る可能性がある
- 親族から無効の訴えをおこされる恐れがある



「もしも」のときにパートナーに財産を残したり、後事を託したい場合は、遺言書や死後事務委任契約なども作成することをおすすめします。
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パートナーに子や親がいる場合の相続
パートナーと親子関係になり、法定相続人になれたとしても、パートナーにお子さんがいたり、親御さんが健在な場合は、常に相続人になる配偶者とは異なり、法定相続になったときに思ったような遺産配分ができないこともあります。
- 年少者(養子)に子がいる場合:子(第1順位の相続人)が相続放棄しない限り、パートナー(養親)に遺産配分ができない
- 年長者(養親)に子がいる場合:法定相続の場合は、子とパートナー(養子)で等分
- 年少者(養子)に子はいないが、親が健在である場合:法定相続の場合は、親とパートナー(養親)で等分



遺言書を作成したり、生前贈与をするときは、遺留分についても検討する必要があります。
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パートナーとの間に子どもを迎える
パートナーとの間に血縁ではないお子さんを迎える方法としては、養子縁組と里親があります。
養子縁組には、特別養子縁組と普通養子縁組の2つの方法がありますが、特別養子縁組については法律婚の夫婦でなければできないこととなっており(民法第817条の3第1項)、同性カップルには認められていません。普通養子縁組は可能です。
なお、里親については、各自治体のパートナーシップ制度を利用することで、LGBTQ+カップルも里親登録ができるようになっているところがあります。


