
遺産分割協議は相続人全員で行う必要がある
相続人のなかに連絡が取れない人がいる場合は、その人の住所を調べて、相続開始と遺産分割協議について連絡をする必要があります。
音信不通・行方不明であっても、生存していれば相続権が失われることはありません。
そのため、遺産分割協議は原則として、連絡が取れない人も含めて、相続人全員で行わなければなりません。



戸籍の附票で住所を調べる
連絡が取れない人の住所は、戸籍の附票からわかることがあります。
戸籍の附票とは、その戸籍が編製されたときまたは入籍したときから、現在または除籍されるまでの住所の履歴を証明したものです。
戸籍の附票は、連絡が取れない人の本籍がある市区町村で取得できます。
交付請求ができる人は、戸籍に記載されている本人、その配偶者、直系卑属(子・孫)、直系尊属(父母・祖父母)です。それ以外の人が交付請求する場合は、委任状の提出を求められることがあります。


住所がわかったら連絡を試みる
戸籍の附票で住所がわかったら、本人限定受取郵便などで手紙を送り、連絡を試みます。
手紙のポイント
- 「相続が発生したこと」と、「相続人全員による遺産分割協議が必要であること」を伝える
- 相続関係説明図(相続人が誰なのかを示した図)を同封する
- 電話番号やメールアドレスなどを書いて、都合の良い方法で連絡をするように促す
- 相続財産の詳細や、連絡が取れない人以外の相続人で話し合ったなどとは書かないようにする
どうしても連絡が取れない場合は
戸籍の附票を取り寄せても住所がわからなかったり、手紙を送ってもその住所に住んでいないなど、どうしても連絡が取れない場合は、家庭裁判所で不在者財産管理人選任の手続きを行います(民法第25条)。
不在者財産管理人とは、連絡が取れない人(不在者)の代理人として不在者の財産の管理・保存します。ただ、「財産の管理・保存」だけでは、不在者財産管理人は遺産分割協議や不動産の売却などができません。そのため、家庭裁判所で権限外行為許可の手続きも行います(民法第28条)。
不在者財産管理人は、利害関係のない被相続人の親族から選ばれることが多いですが、場合によっては弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることもあります。
家庭裁判所に選任・許可がされたら、不在者財産管理人が不在者に代わって遺産分割協議に参加し、不在者に分配された相続財産を管理します。



参考:不在者財産管理人選任(裁判所)
参考:不在者の財産管理人の権限外行為許可の申立書(裁判所)
生死が長期間不明な場合は
どうしても連絡が取れず、生死も長期間不明な場合は、家庭裁判所で不在者を法律上死亡したと宣告する制度があります。これを「失踪宣告」といいます(民法第30条)。
失踪宣告は、つぎの2種類に分けられます。
- 普通失踪:生死が7年間不明の場合
- 危難失踪:戦争や船舶の沈没などの危難に遭遇し、その危難が去った後1年間生死不明の場合
失踪宣告を受けると不在者は死亡したとみなされるため、不在者を除いた相続人全員で遺産分割協議ができます。なお、普通失踪の場合、相続は失踪から7年後に開始します。7年前に相続が開始するのではありません。



参考:失踪宣告(裁判所)