
この記事では、同性パートナーに万一のことがあったときの備えについてご説明します。
目次
パートナーを祭祀主宰者に指定する
同性パートナーのご遺体を引き取りたい場合は、遺言書でパートナーを祭祀主宰者に指定しておくことをおすすめします。
遺体を引き取る権利が誰にあるかということを定めた法律はありません。しかし、民法第897条によって、遺体・遺骨は相続の対象外で、祭祀主宰者に権利が認められています。



遺体の所有権は相続人に帰属し(大審院大正10年7月5日判決)、遺骨については「慣習に従って祭祀を主宰すべき者」に帰属する(最高裁平成元年7月18日判決)という裁判例もあります。
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祭祀主宰者は被相続人の指定で決まる
祭祀主宰者は遺言者の指定で決まります(民法第897条)。遺言書や書面でなくてもよいという裁判例もありますが、遺言書で指定したほうが確実です。
さらに、死後事務委任契約を公正証書で作成し、自分の死後の葬儀や手続きなどとあわせて、遺体・遺骨の引き取りについてパートナーに託しておけば安心です。



誰を祭祀主宰者とするか意見が対立した場合は、家庭裁判所が定めることになっています(民法第897条)。
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市町村では遺体の引き取り手を三親等以内の親族に限定
住所・氏名が不明で引き取り手がないとき(行旅死亡人)や、身寄りのない人が誰にも看取られることなく亡くなったとき、その遺体と遺品は、警察の手続きが済んだ後、市町村に移されます。市町村では三親等以内の親族に限定して遺体の引き取り手を探し、引き渡します。
遺体を引き取る義務や権利が誰にあるかということを定めた法律はありません。
しかし、生活保護法第18条は、生活保護を受けていた方の葬祭を行う扶養義務者がいない場合や、故人の葬祭を行う扶養義務者がおらず、故人が残した金品で葬祭費用が賄えない場合に、葬祭扶助を行うと定めています。ここでいう「扶養義務者」とは、つぎの人たちを指します。
- 配偶者(民法第752条)
- 直系血族、兄弟姉妹(民法第877条第1項)
- 三親等内の親族(民法第877条第2項)
市町村では、生活保護法第18条の考え方や、遺品の相続のことも考慮して、遺体・遺骨と遺品の引き取り手を扶養義務者である三親等内の親族に限定していると考えられます。



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