
法定後見制度とは
法定後見制度は、認知症、知的障がい、精神障がいなどで、既に判断能力が不十分な状態になっている人について、本人またはまわりの人が家庭裁判所へこの制度の利用を申請(申立て)し、その審判によって利用できる制度です。
判断能力の程度による3類型
判断能力が不十分といっても、その程度はさまざまで、すべての人に同じような支援が必要であるとは限りません。そこで対象者(守られる人)の判断能力の程度によって、つぎのように3類型が用意されています。
法定後見制度 | 後見 | 保佐 | 補助 |
対象者(守られる人)の判断能力 | 常にない
(自分の子や親族が誰なのかわからないような状態) |
著しく不十分
(1万円札と5千円札の区別がつかなかったり、火の元の管理を頻繁に忘れたりするような状態) |
不十分
(預貯金の出し入れに不安があるような状態) |
対象者(守られる人) | 成年被後見人 | 被保佐人 | 被補助人 |
支援者(守る人) | 成年後見人 | 保佐人 | 補助人 |
監督人(支援者をチェックする人) | 成年後見監督人 | 保佐監督人 | 補助監督人 |
支援者に与えられる権限
法定後見制度では、判断能力が不十分な人を守るために、成年後見人などの支援者に代理権、同意権、取消権の権限が与えられます。
権限 | 成年被後見人 | 保佐人 | 補助人 |
代理権 (対象者の契約等を代わりに行うことができる) |
あり |
原則なし (家庭裁判所の審判によって付与) |
原則なし
(家庭裁判所の審判によって付与) |
同意権 (対象者の契約等に同意することができる) |
なし |
一部あり (民法第13条第1項所定の行為+α) |
原則なし (家庭裁判所の審判によって付与) |
取消権 (対象者が行った契約等を、過去に遡って取り消すことができる) |
あり
(日常生活に関する行為を除く) |
一部あり
(民法第13条第1項所定の行為+α) |
原則なし
(家庭裁判所の審判によって付与) |



また、保佐人の同意権・取消権は、民法第13条第1項所定の行為以外についても、家庭裁判所の審判により同意権・取消権の範囲とすることができます。
支援者になれる人
成年後見人、保佐人、補助人になるための特別な資格はありません。成年(満18歳以上)の人であれば、原則として誰でも支援者になることができます。
ただし、民法第847条に定められている後見人の欠格事由に該当している人は、支援者になれません。
- 未成年者
- 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人
- 破産者
- 対象者に対して訴訟を提起した・している人とその配偶者・直系血族
- 行方の知れない人
支援者になってもらいたい人を家庭裁判所に申請することも可能ですが、近年では親族ではなく、法律や福祉の専門家(団体)が成年後見人になることが増えています。





成年後見人の仕事
療養看護(身上監護)
入退院や介護施設入退所の手続き、介護認定の手続き、介護サービス契約、住まいの賃貸借契約、住宅改修の手続き、医療費・介護費用・家賃等の支払い、生活必需品の購入など、医療・ケア・生活全般の契約や支払い事務をサポートします。
また、事業者の契約履行状況を確認し、成年被後見人の権利が侵されていないかを監視します。
手術などの医療行為については、成年被後見人本人の同意が必要です。成年後見人は同意権はありません。



財産管理
成年被後見人名義の現金・預貯金・不動産・金融商品等の管理・保存、年金や家賃・賃料など定期的な収入の受領、税金や各種料金の支払いなどを行います。
成年後見人の義務
家庭裁判所への報告義務
成年後見人は行った仕事の内容を報告書にまとめ、家庭裁判所へ年1回提出する必要があります。
また、成年後見監督人が選任されている場合は、監督人に対する報告もしなければなりません。
身上配慮義務
成年後見人は、被成年後見人の生活・療養看護・財産管理に関する職務を行うときは、成年被後見人の意思を尊重し、成年被後見人の心身の状態・生活状況に配慮しなければなりません。
法定後見制度利用の流れ
法定後見制度を利用するには、まず家庭裁判所に申立書を提出します。
【申立人になれる人】
本人、配偶者、四親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、任意後見受任者、成年後見監督人等、市区町村長、検察官
【必要書類】
申立書、親族関係図、財産目録、診断書など(裁判所のサイトで確認できます)
【申立てをする裁判所】
対象者の住民票上の住所地を管轄する家庭裁判所
- 東京23区・島しょ部:東京家庭裁判所本庁
- 上記以外の都内の市町村:東京家庭裁判所立川支部
家庭裁判所はまず、申立人や対象者と面接をし、申立内容、診断書、面接状況から、後見・保佐・補助のどれに該当するか審判を出します。
審判後2週間は、関係者が審判に異議を申し立てることができます。
2週間以内に異議の申し立てがなければ確定となり、家庭裁判所は東京法務局に登記を依頼します。
東京法務局で登記が完了すると、全国各地にある法務局で後見登記事項証明書の発行ができます。



家庭裁判所の審判の内容に従って、サポートがスタートします。
法定後見制度の利用にかかる費用
申立費用
申立費用は原則として、対象者ではなく、申立人が負担します。
申立てや登記の手数料と切手代、申立書に添付する診断書、戸籍謄本、住民票などの取得費用のほか、また、家庭裁判所が医師鑑定を求めたは、鑑定費用がかかります。
支援者への報酬
支援者の報酬額は家庭裁判所が決めます。1年間ごとの後払いです。
報酬額が決まったら、支援者は、自分が管理している対象者の預貯金からその金額を引き出して、報酬として受け取ります。