
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は、自分の直筆で書く遺言です。自分ひとりで作成でき、証人が必要なく、お金もほとんどかかりません。



全文が自筆で書かれていること
自筆証書遺言は、遺言の内容の全文が遺言者の直筆で書かれていなければなりません(民法第968条第1項)。
パソコンのプリンターで印字されたものや、録音・録画されたものは、いまのところは無効です。
ビデオレターは、遺族などに想いが伝わりやすいというメリットがありますが、遺言としての有効性はありません。遺言書を補うメッセージとして作成するようにしてください。



日付が自筆で書かれていること
自筆証書遺言には、日付が自筆で書かれている必要があります(民法第968条第1項)。
なお、例えば「令和5年10月吉日」のような「吉日遺言」は無効の判決が出てています(最一小判昭54・5・31)。これは、複数の遺言書が見つかったときに、どの遺言書が新しいものかがわからなくなってしまうためです。
自筆で署名されていること
自筆証書遺言には、自筆で署名されている必要があります(民法第968条第1項)。
誰が遺言書を書いたのかを特定できれば、戸籍上の氏名でなくても構わないとされています。しかし、疑義が生じないように、また、名義変更などの相続手続きがスムーズにできるように、通称名と戸籍上の氏名を併記することをおすすめします。



押印があること
自筆証書遺言には、印鑑が押されている必要があります(民法第968条第1項)。



加除修正の方法が法律の規定どおりであること
遺言書に加除修正をする場合は、民法第968条第3項に定められた方法に従う必要があります。
- 欄外に加除修正した箇所を記入する
- 上記の箇所に、欄外に何字削除し、何字追加したかを記入する
- 上記の箇所に署名する
- 加除修正した箇所に押印する
画像出典:法務省
ひとりの遺言者による遺言書であること
たとえ夫婦であっても、複数の人がひとつの遺言書で遺言をすることはできません(共同遺言の禁止:民法第975条)。



法務局に保管してもらう場合
自筆証書遺言は、各地にある遺言書保管所(法務局)に保管することができます。その場合は、上記の要件に加えて、つぎの要件に従う必要があります。
- 用紙はA4サイズ
- 文字の判読を妨げるような地紋・彩色等のない用紙を使用
- 余白を確保(上側5mm以上、下側10mm以上、左側20mm以上、右側5mm以上)
- 余白にはページ数や変更・追加の記載を含めて何も記載しない
- 片面のみを使用(裏面には何も記載しない)
- 遺言書本文・財産目録の各ページに、総ページと通しでページ番号を記載(例:1/3、2/3、3/3 余白には記載しない)
- ボールペン等の容易に消えない筆記具を使用(長期間保存するため)
- 複数ページでも綴じ合わせない(ホチキス・糊付け等不可)
画像出典:法務省




自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリットについては、つぎの記事をお読みください。




