
遺贈とは
遺産は、遺言書で意思表示することによって、自分の死後に相続人以外の人・団体に贈ることができます。これを「遺贈」といいます。
遺贈と贈与との違い
遺贈は、遺言者の死後に、遺産を贈られる側の意思に関わりなく、贈る側の一方的な意思で遺産を贈ることができます。
一方、贈与は、財産を贈る側と贈られる側との間に「あげます」「はい、もらいます」という合意が必要で、生前でも財産を贈ることが可能です。



考えられる遺贈先
配偶者・子・親・兄弟姉妹といった相続人以外の人・団体に、遺産の全部または一部を贈ることができます。
- 法律上の婚姻関係・親子関係にないパートナー(事実婚・同性パートナーなど)に遺産を贈りたい
- 特にお世話になっている人に遺産を贈りたい
- 自分の死後に後事を託している人に遺産を贈りたい
- 慈善団体に遺産を贈りたいなど





遺贈の種類
特定遺贈
遺贈は、大きく分けて2種類あります。
ひとつは、「○○に所在する不動産」「○○銀行○○支店の口座の貯金」などのように、贈る財産を具体的に指定する「特定遺贈」です。
第○条 遺言者は、遺言者が所有する次の不動産を、○○(住所・生年月日)に遺贈する。
※土地・建物の表示を記載
包括遺贈
もうひとつは、「財産の全部」や「財産の半分」「財産の何%」などのように、贈る財産を割合などで指定する「包括遺贈」です。
第○条 遺言者は、遺言者が所有する一切の財産を、○○○○(生年月日、住所)及び○○○○(生年月日、住所)に、それぞれ2分の1ずつの割合で包括して遺贈する。





負担付遺贈
例えば、自分の死後に「ペットのお世話をしてほしい」「老親の面倒をみてほしい」などの条件の見返りとして、遺産を贈ることができます。これを「負担付遺贈」といいます。
第○条 遺言者は、遺言者の愛犬○○(柴犬・オス)を、○○(生年月日・住所)に遺贈する。
2 前項記載の犬が遺言者の生存中に死亡しないこと、受遺者○○が前項の遺贈を放棄しないこと、受遺者○○が前項記載の犬を愛情をもって終生飼養することを条件に、次の財産を同人に遺贈する。
遺言者名義の○○銀行○○支店の定期預金(口座番号○○○○)のうち、金○百万円
配偶者居住権
自分の死後に、残された配偶者が自宅に住み続ける権利を遺贈で与えることができます。これを「配偶者居住権」といいます。
第○条 遺言者は、遺言者の妻○○(生年月日)に、遺言者が所有する次の建物の配偶者居住権を遺贈する。
※建物の表示を記載
第○条 遺言者は、遺言者の長男○○(生年月日)に、次の建物の負担付所有権を遺贈する。
※建物の表示を記載
第○条 遺言者は、長男○○に、次の土地の所有権を相続させる。
※土地の表示を記載
付言事項を書きましょう
付言事項は、法律上の効果はありませんが、遺言書を読んだ人に贈るメッセージです。
「なぜ遺族以外の人に財産をあげるのか」と疑問に思う遺族もいるかもしれません。
付言事項で遺贈する理由、感謝の気持ち、後事を託すメッセージなどを記しておくと、自分の想いが遺族に伝わります。
○○さんには、いろいろと面倒を見てもらい、本当に感謝しています。恩返しをしたいと考え、私の財産を贈ることにしました。子どもたちには、不動産や金融資産を生前に贈与しているので、○○さんへの配慮をお願いします。
私の死後、愛犬○○は、○○がよく懐いている○○さんにお世話をしてもらうことが一番よいと考えました。そのために愛犬○○と、飼育費として○○銀行に預けてある貯金を贈ります。○○さんにはご負担をおかけしますが、どうか○○を終生かわいがってください。
妻○○が、先々の心配をすることなく自宅に住み続けてほしいと考え、配偶者居住権を活用することにしました。長男○○は、お母さんの面倒をちゃんと見てくれると信じていますが、どうか父の想いを受け止めて、お母さんを大切にしてください。


